ドイツの障害者就労

日本では障害者就労と言えば事務仕事や補助業務ですが、ヨーロッパでは決してそうではありません。
ドイツの職業教育による専門業種は、21分野278種です。
それぞれ教育期間が6ヶ月、9ヶ月、2年、3年半あり、試験に合格することで、専門職として業務に就くことが出来ます。(商工会議所で認定)
障害者も非障害者も同じ基準で試験を受け、資格を得ます。
従って企業は、障害者を雇用する際、障害に対する配慮は必要ですが、業務能力が担保された人を雇うことが出来ます。
ベルーフでは、ドイツの障害者就労を手本に、企業で働くための業務能力を身に着けられる教育を行っています。

専門職就労のメリット

専門職就労は、就労先の企業にとって次のようなメリットがあります。

  • まず、専門職就労は、企業が障害者法定雇用率を達成するために有効であるという点です。現在、障害者雇用促進法で定められた民間企業の障害者法定雇用率は2.3%です。今後段階的に引き上げられ、2026年には2.7%となることが決まっています(1)。そのため企業は、雇用率達成に向けてこれまで以上に施策を講じなければなりません。従来、企業は、単純作業を切り出すなどして補助的業務を用意することで、障害者雇用を創出してきました。しかし、補助業務も無限にあるわけではありません。この手法には限界があります。したがって今後、いかに障害者就労の職域を開拓し、障害者に能力を発揮して貢献してもらうかが、企業にとって大きな課題となってきます。専門職就労が、その解決策となります。
  • また、専門職就労には採用時のメリットがあります。なぜでしょうか。専門職として発揮する職務能力には、障害者と非障害者とで差はありません。企業は、障害者と非障害者とで雇用条件を変える必要はなく、職務能力による評価にもとづいて採用を検討することができます。企業にとって、採用の基準が明確であるということはメリットです。

専門職就労は、就労者本人にとっても次のようなメリットがあります。

  • まず、専門職は、従来の補助業務中心の求人に比べて高い専門性が求められるため、給与水準が高くなるという点です。高い給与は、働くモチベーションに大きく影響するでしょう。
  • 次に、専門職になることで長く安定して働くことができるという点です。障害者就労、とくに精神障害者の就労において、就労継続率の低さが課題となっています(2)。就労が継続しない理由は、従来、障害者就労で中心となっている補助業務では、仕事のやりがいと責任感を感じることは難しく、長く働きたいという意欲を持ちにくいことにあります。しかし専門職になれば、世の中への役立ちを自ら創り出し、仕事の楽しさも大変さも味わうことができます。働きがいを感じるため、長く安定して働くことができるのです。
  • 最後に、専門職は職務範囲が明確であるため、企業から合理的配慮を得やすいという点です。「自分は専門職としてこのような貢献ができる。そのために、しかじかの点について配慮をいただきたい」という説明を、企業に対して明確に伝えることができます。

専門職就労には、支援者にとっても次のようなメリットがあります。

  • 就労した障害者が長く安定して勤務できれば、支援者としても、早期離職してしまう懸念に煩わされなくなります。さらに、長期就労を見据えた支援に集中できるというメリットも得られます。

(1) 参考:厚生労働省『令和5年度からの障害者雇用率の設定等について』(2023年1月)

(2) 参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター『障害者の就業状況等に関する調査研究』p22~(2017年4月)