ドイツの医療事情③ ドイツ人は薬嫌い?

日本で病院に行くと、たいてい何らかの薬が処方されます。風邪で受診すれば解熱剤や咳止め、花粉症なら抗アレルギー薬など、症状に応じた薬をもらって帰るのが一般的。しかし、ドイツではそうはいきません。同じような症状で受診しても、「様子を見ましょう」と言われることが多く、薬の処方には慎重な傾向にあります。

風邪や不調にはお茶でケア

ドイツに住む日本人や旅行者の間では「ドイツ人は薬を飲みたがらない」という印象が広まっています。確かに、風邪をひいたときにすぐに薬を飲むのではなく、ハーブティーを飲んでゆっくり休養する姿はよく見かけます。実際にお茶の種類は実に豊富で、喉、鼻水、咳といった風邪の症状に対するもののみならず、不眠、消化器系の不調、膀胱炎、生理痛、不安や不眠など、様々な不調に対するお茶がスーパーやドラッグストアで売っています。

この背景には、ドイツでは、自然療法やホメオパシー、植物由来の製品が長い伝統を持っており、多くの人は、薬局で販売されている化学薬品に頼る前に、まずカモミールティーやショウガ、アルニカなどの穏やかな代替手段を試す傾向があります。人間の自然治癒力を重んじており、抗生物質の服用に関しては日本よりも慎重な傾向にあります。2023年のstatista consumer insight による薬の服用を控えている人の国別割合の調査では、1位がフランスで45%、ドイツは2位の43%という結果もでています。

意外と高い、ドイツの医薬品消費量

しかし、薬の投薬、服薬には用心深いドイツ…というイメージとは裏腹に、実際のデータからは意外な事実浮も浮かび上がってきます。ドイツは実は、欧州内で最も医薬品消費量が多い国の一つで、日本よりも多いことが統計で確認されています。

OECDのデータによると、ドイツでは1人当たりの医薬品支出がOECD平均を上回り、日本を上回る傾向があります。この背景には、慢性疾患の治療や予防のための薬が多く処方されること、高齢化社会の進行、そして健康保険制度が医薬品費用の約80%を補助している点が挙げられます。一方、日本では市販薬が普及しており、短期間での薬使用が一般的です。このような違いは、医療制度や文化的要因が影響しています

「ドイツ人は薬を好まない」という認識は、部分的には正しいものの、実際の状況はより複雑で、統計上、ドイツの医薬品消費量が日本よりも多いという事実もあります。しかし、この違いは「薬を好む・好まない」という文化的要因だけでなく、医療制度や生活習慣、高齢化社会への対応方法といった複合的な要素も加味する必要がありそうです。

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