ドイツの医療事情①ドイツの医療機関は、なぜ予約が取りにくいのか

ドイツは医療大国といわれており、特に日本では明治維新以降、ドイツ医学を手本としてきたため、そのようなイメージが定着しているように思います。しかし戦後はアメリカ医学からの影響が大きくなり、医学=ドイツという図式も薄れてしまっているのも現状です。とはいえ、ドイツの医学教育、保険制度や医療制度全般は優れた制度であり、日本もかつてのドイツ医学のみならず、健康保険制度なども見本として導入しています。

ただし、実際に日本人としてドイツで暮らすと、面倒な状況に出くわすこともしばしばあります。病院の予約は取りにくく、医者はなかなか薬を出してくれない。公的健康保険の加入は一度拒否すると再度加入することが難しい…など、日本との大きな違いを感じます。

予約が取りにくいのはなぜ?

患者目線で見るドイツの医療は、とにかく医療機関の予約が取りにくいという点があります。たとえば風邪をひいたから病院へ―と思っても、内科であろうとも飛び込みで診てもらえることは少ないのです。私の場合は、火傷をしたため皮膚科に駆け込んだら、診療予約が取れるのは2週間後といわれて唖然としました。

ドイツでは、医療システムが効率的である一方で、患者数が多いことや医療リソースの限界が、特に専門医の予約に影響を与えることが多いといわれており、なかでも医療保険制度が予約の取りにくさの大きな原因となっているようです。

ドイツの医療保険

医療保険には二種類あり、公的保険(Gesetzliche Krankenversicherung)と、私的保険(Private Krankenversicherung)があり、これによって医療アクセスや診療の優先順位に違いが生じています。

公的保険は、国民の約85%(約7100万人)が加入しており、患者数も多く、またこれらの患者は契約している医療機関に限られることが多いため、特定の診療所や専門医へのアクセスが制限されることがあります。これにより、特に公的保険患者向けの診療予約が非常に混み合いやすく、結果として予約が取りにくくなっています。一方、プライベート保険の患者はより広い選択肢があるため、早めの予約を取りやすいです。

また、医療機関側からの視点でいうと、医療保険による診療報酬の違いも、診察の順番に関わっており、プライベート保険患者は診療報酬が高く、医師にとって経済的に有利です。このため、医療機関はプライベート保険の患者を優先する傾向があり、公的保険の患者が後回しにされることがあるといわれています。公的保険の患者が多いため、医療機関が対応できる診療数に限りがあり、専門医などは特に予約が先延ばしにされやすいです。これも、プライベート保険患者がより早く予約を取れる背景の一つです。

また、診療予約の取りにくさは、保険制度のみならず、様々な要因があります。医師不足や高まる医療ニーズに加えて、ホームドクター(かかりつけ医)からの紹介状が必要となるため時間がかかってしまうというわけです。

このような問題も踏まえて、現在、ドイツの医療機関は改革期にあります。保健相であるラウターバッハ氏は、Krankenhausreform(病院改革)と題し改革を進めているのが、ドイツの医療制度の現状のようです。

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